附属病院・感染免疫内科附属病院・感染免疫内科

STD(性病・性感染症)について

STDとはSexually(性行為により)Transmitted(感染する)Diseases(病気)の頭文字をとったものです。感染者の体液(血液、膣分泌液、精液)が性器や腸管、口の粘膜に接触することで感染します。一般的にSTDと呼ばれる感染症の中には唾液や排泄物などを介して感染し得るものが含まれますが、通常は性行為以外の日常生活で感染することはないと考えてよいでしょう。しかしながら、STDは決して特殊な感染症ではありません。風俗で働いている方や利用している方だけではなく、ごく普通のカップルの間でも広がることがあり、どなたでも罹患する可能性がある病気です。なお、性行為には膣性交以外にも口腔性交や肛門性交も含まれます。

受診を希望される方は[受診案内]をご覧下さい。当院では他の疾患と区別することなく診療し、また患者様のプライバシーを尊重して対応します。診療情報が本人の同意なく第3者(親権者を含む)に伝わることもありません。早期診断、早期治療が重要です。ご不安なことがあれば、躊躇なく相談して下さい。

注意して頂きたいこと

  1. 症状が出ない(あるいは症状に気づかない)ことがある

    体の表面から見えない部位に病変があることもあります。症状が出ない場合でも病気は進行し、強い感染力がある場合があります。

  2. 不妊の原因となる。子供に感染する。

    淋菌や性器クラミジアなどの一部のSTDは不妊の原因となることが知られています。出産時の感染や、母乳などの出産後の接触によっても感染します。先天性梅毒は現在のところ国内では稀ですが、重大な後遺症を残すこともあります。

  3. 他のSTDに感染しやすくなる(HIVなど)

    STDは感染した粘膜の炎症により免疫の障害を起こすことが多く、他の細菌やウイルスが侵入しやすくなります。STDには淋菌や梅毒など比較的感染力が強いものからHIVやHCVなどの感染力は弱いとされているものなど様々ですが、感染のしやすさは粘膜での防御機能の状態によっても大きく変わります。

  4. 予防について

    コンドームは有効な予防法で、使用が勧められます。適切に利用すれば性器や精液の直接による病原体の感染を防ぐことが出来ます。多様化した性行為が一般的になっており、感染源となる粘膜の接触を完全に防ぐことはできないため、感染者との性行為があった場合は検査をお勧めします。

代表的なSTDについて

  1. 梅毒

    病原体は梅毒トリポネーマで、皮膚や粘膜病変、もしくは体液中の梅毒トリポネーマと粘膜が接触することで感染します。潜伏期は3〜4週間ほどで、感染した部位にしこりやただれができ(第1期)、2〜3ヶ月後に全身の皮膚に褐色の皮疹ができ(第2期)、一部は数年〜数十年後(後期)に脳や血管に浸潤します。感染力は比較的強いものの、ほとんど無症状な場合もあるため、感染者との性的な接触があれば検査をお勧めします。梅毒は、この数年、国内での報告者数が激増しています。一部の後期梅毒を除き、抗菌薬により治療することができます。母体の感染により出生時が先天梅毒になることがあります。

  2. 淋菌感染症

    病原体は淋菌で、粘膜との直接の接触で起こります。2〜7日間の潜伏期間を経て、男性では排尿時痛や膿の排泄で発症します。女性では膣周囲に感染するため症状が出にくいことが知られています。また、咽頭や直腸にも感染し、その場合も自覚症状に乏しいことが多いですが、強い感染力があります。不妊の原因ともなります。抗菌薬により治療が可能です。

  3. 性器クラミジア感染症

    クラミジア・トラコマティスが粘膜と接触することにより感染します。淋菌と合併する場合もあります。潜伏期間は1〜3週で淋菌より長く、症状が軽いことが多いです。不妊、流産の原因ともなります。

  4. 性器ヘルペス

    ヘルペスウイルスが粘膜と接触することにより感染します。抗ウイルス薬より治療が可能です。放置していても2週間程度で自然に治ることがあります。一度感染すると、免疫の状態によって再発を繰り返すことがあります。

  5. その他

    急性肝炎、慢性肝炎の原因となるHBV、HCVやHIVなどの慢性ウイルス感染症もSTDの一種です。